働く理由がわからなくなったときに読む記事|モチベーション迷子から抜け出す方法

キャリア

「自分は何のために働いているんだろう?」――ふとそんな風に感じて、仕事のモチベーションが迷子になってしまうことはありませんか?若手社会人の中には、入社当初の熱意を失い、働く意味や目的を見失ってしまう人も少なくありません。実はそれ、あなただけの悩みではなく、多くの人が通る道です。本記事では、学術的な観点で以下の出典に基づき、働く意義を見失う原因とモチベーションを取り戻すヒントを分かりやすくお届けします。

出典:正木,岡田(2014)企業従業員の働くことの意味醸成プロセスに関する探索的検討
https://www.jstage.jst.go.jp/article/jaiop/28/1/28_43/_article/-char/ja/

働く意義を見失うのは珍しくない

現代の職場環境やキャリア観は大きく変化しており、「働くことの意味」がこれまで以上に問い直されるようになっています​。ある調査では、新入社員の多くが「やりがい」や「自分の能力を発揮できること」を重視し、30代になると「自分のスキルや知識を高めること」を重んじる傾向が示されています​。つまり、若い世代ほど仕事に自己実現や成長の意義を求めており、その意味で「何のために働くのか」を悩みやすい土壌があるのです。

こうした背景から、仕事の中で期待していた意義が感じられなくなると、「自分の働く理由がわからない…」という状態に陥りがちです。しかしその悩みは決して特別なものではありません。むしろ誰もが一度は直面しうるものであり、乗り越えていくこともできます。本音ベースで言えば、「働きたくないわけじゃないけど、なぜ働くのかが見出せない」と感じてしまう瞬間は珍しくないのです。

モチベーション低下を招く主な要因

では、なぜ私たちは働く意義やモチベーションを見失ってしまうのでしょうか。研究や調査から見えてくる主な要因は次の通りです。

  • 理想と現実のギャップ(リアリティショック):入社直後などに抱いていた理想と、実際の仕事のギャップに衝撃を受ける現象を指します。パーソル総合研究所の調査では、新入社員の約76.6%が入社後「何らかのリアリティショック」を感じたと報告されています​。このリアリティショックによって新人のモチベーションや態度は大きくネガティブに傾き、解消されない場合はモチベーションの喪失につながることが指摘されています。理想が高かったぶん「こんなはずじゃなかった…」と感じてしまい、働く意義を見失うきっかけになるのです。
  • 職場の人間関係の悪化:一緒に働く上司や同僚との関係は、意外なほどやる気に影響します。「一般社団法人 若手社会人就労意識ギャップ調査報告書2016」では、「職場の人間関係が良くないとき」が若手社員のモチベーション低下理由の第1位(39.1%)に挙げられました​。逆に言えば、職場の人間関係が良好だとモチベーションも上がりやすいということです。同僚とのコミュニケーション不足や上司との信頼関係の欠如は、「こんな職場で働く意味あるのかな…」という気持ちを生みやすくします。
  • 成長実感の欠如や挫折:毎日同じような仕事の繰り返しでマンネリ化したり、思うような成果が出ずに挫折を味わったりすると、やりがいを感じにくくなります。ネガティブな出来事が続くと、人は「本当はこの仕事が好きだったはずなのに、今は生活のために働いているだけ」という風に物事を捉えがちです。実際、ある研究では上手くいっている時には仕事の楽しさなど内発的な意味づけをし、失敗した時には給与や条件など外発的(手段的)な意味づけに偏る傾向が報告されています​。このように、自分の成長や達成感が得られない状態が続くと、仕事の本来の意義よりも表面的な理由しか見えなくなってしまい、モチベーション低下に拍車がかかります。

モチベーション迷子から抜け出すヒント

では、失ったモチベーションを取り戻し、「働く理由」をもう一度見つけるためにはどうすればいいのでしょうか。いくつか実践的なヒントを紹介します。

  • 自分にとっての「働く意味」を見つめ直す:まずは原点に立ち返り、なぜこの仕事を選んだのか仕事を通じて何を実現したいのかを考えてみましょう。働く意味は最初から与えられるものではなく、後から自分で見出していけるものです。筑波大学の研究によれば、仕事を通じて自分が社会の中でどんな価値を発揮できているかを意識していくことが、働くことの意味を育むプロセスの一部だといいます。今の仕事の中にも、「誰かの役に立っている部分」や「自分ならではの貢献」がきっとあるはずです。小さなことでも構いません。それに気付くことで、失われた目的意識が少しずつ蘇ってくるでしょう。
  • 内発的モチベーションを大切にする:「お金のためだから仕方なく…」という考えにとらわれすぎていないか振り返ってみましょう。もちろん給与や待遇は大事ですが、それ“だけ”が原動力になるとモチベーションは続きません。研究でも、仕事に対する高い動機づけを持つ人ほど、自律性など内発的な要因によって仕事に励み、逆にお金など外発的な要因への依存度が低いことが示されています。意義を見失ったときこそ、自分が「やってみたい」「面白そう」と思えるタスクを探したり、スキルアップの目標を立てたりしてみてください。小さな挑戦や達成でも、「仕事って意外と面白いかも」と感じられればしめたものです。
  • 人間関係や環境を整える:モチベーション低下の要因で触れたように、職場の人間関係はやる気に直結します。まずは信頼できる同僚や先輩に今の気持ちを相談してみるのも有効です。話すことで気持ちが整理されるだけでなく、周囲のサポートやアドバイスが得られるかもしれません。また、上司に業務量や配属について相談し、負担を調整したり興味のある仕事に挑戦させてもらったりするのも一つの手です。環境を変えるのが難しい場合でも、職場の外に mentor(メンター)的な存在を見つけてみるのもいいでしょう。いずれにせよ、一人で抱え込まないことが大切です。人とのつながりを見直すことで職場における孤独感が薄れ、前向きな気持ちが戻ってくることがあります。
  • キャリアの展望を描く:今一度、自分のキャリアについて将来的な展望を描いてみましょう。5年後、10年後にどんな仕事をしていたいか、どんなスキルを身につけていたいかを書き出してみるのです。漠然と働いていると感じていた毎日に、自分なりの目標という灯りをともす作業でもあります。「一般社団法人 若手社会人就労意識ギャップ調査報告書2016」では、あらかじめキャリアプランを持って就職した人は、就職後にギャップで落胆しにくく、転職志向が低く、昇進意欲が高い傾向が見られました。今からでも遅くありません。自分の軸となるキャリアビジョンを持てれば、目の前の仕事にも意味づけがしやすくなり、「この経験は将来につながっている」という実感がモチベーションを支えてくれるでしょう。

おわりに:迷った先に見えるもの

モチベーションを見失うのは決して怠けではなく、多くの人が直面する成長痛のようなものです。大事なのは、そのサインをきっかけに自分と仕事の関係を見つめ直し、軌道修正すること。「一般社団法人 若手社会人就労意識ギャップ調査報告書2016」で見たように環境要因も大きいですが、自分の意識次第で乗り越えられる部分もたくさんあります。焦らなくても大丈夫。今回紹介したヒントの中でできそうなことから試しつつ、もう一度「ああ、だから自分は働いているんだ」と思える瞬間を増やしていきましょう。

モチベーション迷子のトンネルを抜けた先には、今より一回り成長した自分がきっと待っているはずです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました