学歴と年収の関係は本当か?統計で読み解く“学歴社会”の現在地

キャリア

日本では昔から「学歴が高いほど年収も高くなる」というイメージがあります。いわゆる「学歴社会」とは、学歴(最終学歴の偏差値の高さ)が人々の収入や社会的成功に強く影響する社会のことです。本記事では学歴=偏差値の高い大学に進学していることと定義し、果たして学歴と年収には本当に明確な相関があるのか、最新の統計データから現在の状況を読み解いてみます。

学歴と年収の相関:統計データで見る傾向

まず、日本国内の公的な統計から、学歴別に平均年収の差を確認します。厚生労働省の「賃金構造基本統計調査」によると、男性の平均月収は以下のように学歴によって明確な差が見られます。

  • 大学・大学院卒:40.05万円
  • 高専・短大卒:31.38万円
  • 高校卒:29.16万円

一方、女性では以下の通りとなっており、男女間でも差が続いています。

  • 大学・大学院卒:29.01万円
  • 高専・短大卒:25.82万円
  • 高校卒:21.29万円
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」 第3表 学歴、性、年齢階級別賃金、対前年増減率及び年齢階級間賃金格差

このデータからは、男性・女性ともに最終学歴が上がるほど平均月収が高い傾向があることが読み取れます。特に男性では大卒・院卒と高卒とで月収に約11万円の差があり、年間では130万円以上の差となります。女性でも同様に大卒と高卒で月収に約8万円の差があり、こちらも年間ベースで大きな開きとなっています。

また、生涯賃金(卒業後から60歳までフルタイムで働いた場合の累計賃金)でも大きな違いが報告されています。独立行政法人労働政策研究・研修機構のまとめでは、男性の生涯賃金は高卒で約2億円、大卒で約2億5千万円と大卒の方が約5千万円多い結果でした。女性も高卒約1億5千万円に対し大卒約2億円と、同程度(約5千万円)の差が出ています​。

これらの情報から、学歴(ここでは主に大学卒かどうか)が高い人ほど平均的に年収・生涯収入が高い傾向があることが裏付けられます。

偏差値の高い大学ほど年収も高い?出身大学別の年収傾向

では、同じ「大卒」でも大学の偏差値(難易度や知名度)の違いによって収入に差はあるのでしょうか。日経の転職サービスによる最新の年収調査データが興味深い結果を示しています​。

この調査(2021年末~2022年に登録した大卒社会人のデータ)によれば、東京大学・一橋大学・東京工業大学といった偏差値の高い難関大学出身者の平均年収は1,000万円を超えていました。​

次いで慶應義塾大学・京都大学・早稲田大学といった有名大学も平均900万円超、さらに大阪大学・東京理科大学・筑波大学なども平均年収800万円台と高水準だったと報告されています​

一方、これらより偏差値が低い地方大学や中堅大学出身者のデータは具体的に示されていませんが、1,000万円超えは難関大学のみであり、有名大学と比較すると平均年収はもう少し低いと考えられます。もちろん個人の業種や職種によって年収は様々なので「出身大学だけで年収が決まる」と断言はできないものの、偏差値の高い大学の卒業生ほど平均年収が高い傾向は確かに見て取れます​。

年齢とキャリア段階による違い

学歴の効果はキャリアの段階(年齢)によっても差が出てきます。若手の頃は大卒でも高卒でも大企業では初任給が横並びの場合も多く、学歴による収入差が顕著に現れにくい傾向があります。しかし中高年になると学歴による年収差が拡大することが統計データからわかります。​

厚生労働省「賃金構造基本統計調査」 第3図 学歴、性、年齢階級別賃金

以下の図は学歴別に見た年齢階級ごとの平均年収を示したものです。高卒者の場合(図1)、男性は20代前半で年収約267万円から緩やかに上昇し50代でピーク約566万円に達し、女性は20代前半約239万円から50代前半で約364万円前後が頭打ちとなっています。一方、大卒者の場合(図2)、20代前半の男性は平均年収約347万円・女性約333万円で、高卒と比べ若年層では差は100万円強ですが、50代では男性が平均800万円超・女性も590万円前後まで達し、高卒との差は200~300万円以上と大きく開きます​。つまりキャリアが進むほど高学歴者の年収カーブは傾きが大きく、昇進や昇給の面で有利になりやすいことがうかがえます​。

出典:https://note.com/p_stat/n/n95f94731bb70

図1:高卒者の年齢階級別平均年収(男女別、2022年データに基づく)。男性は50代前半で平均年収約560万円に達する。女性も50代前半で約360万円に達するが、以降は頭打ち傾向が見られる。

図2:大卒者の年齢階級別平均年収(男女別、2022年データに基づく)。高卒に比べ全体的に年収水準が高く、男性は50代後半で平均年収830万円以上に達し、女性も同年代で約590万円に至る。若年層では高卒との差が比較的小さいものの、中高年層では差が大きく広がっている。

おわりに:学歴社会の現在地

以上の統計から、「学歴が高いほど年収も高い」という関係は概ね事実であり、現在の日本社会においてもその傾向が色濃く残っていることがわかりました。高学歴の人ほど高収入の職業に就きやすく、キャリアを重ねるほど収入格差が広がるデータが示されています。ただし、これはあくまで平均的な傾向であり、個人レベルでは例外もあります。学歴以外にも業界・職種の選択、本人の能力や経験、人脈など様々な要因が年収に影響します。最近では実力主義や多様なキャリアが重視され、「学歴だけが全てではない」という声も高まっています。それでも統計的に見ると、高学歴者が経済的に有利に働く構図は依然として存在しており、“学歴社会”は完全には崩れていないと言えるでしょう​。

今後も学歴と年収の関係性がどう変化していくのか、動向を注視する必要がありそうです。

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